2022.11.12
映画をつくる、その理由
社員教育
ストラテジックパートナーズでは、創業依頼、映画づくりを続けています。最近では、島根県の古来から伝わる「たたら製鉄」を舞台にして、親子愛を描く短編映画「たたら」を制作しました。
前々作、前作も、双方国際映画祭に連続授賞していて、今回作も11月からベルリン国際映画祭から来年9月まで、各国際賞のエントリーを行います。授賞できるかは未知数ですが、楽しみではありますね。
さて、当社はなぜ映画をつくるか。その理由は以下の通りになります。
社員教育
まず最初の目的としては、社員教育です。社員教育も2つの意味があり、その一つは、映像制作スキルの向上です。
①映像スキルの向上
当社は企業からCMやPVなどの映像制作を請け負いますので、
制作を担当する脚本、プロデューサー、ディレクターやプロダクションマネージャーなど、様々な人材を育成しなければなりません。よって中途採用なら経験者もいますが、新入社員となると、現場で覚えるのが一般的ではありますが、やはり現場はプロで固めるのがクライアントに対する礼儀になります。
撮影現場で“研修中”のバッジをつけるわけにもいきません。
よって、社内で映像制作の現場をつくり、社員研修を行うのが当社のスタイルとなっています。
昔は、知人や友人の結婚があれば、その「結婚ビデオ」の制作を無償でつくったものです。
結婚前の新郎新婦の要望を聞きつつ、どんな企画、どんな撮影を行うかを決めて結婚式で放映していました。
結婚式はリアルな場所ですから、参加者の反応も確かめることができます。
こうして、クライアントのある実践の制作の現場の前に、新人に「結婚ビデオ」を通じて映像制作のイロハを教えていきました。
ただし、結婚式は周知のように定期的に発生するものではありません。
そこで考えたのが、映画制作なのです。
2年に一回とはなりますが、映画制作の現場をつくり、新人の育成を行うことにしているのです。
もう一つが、
②チームビルディング
です。
この映画制作の根幹に関わる業務は全て新人で固めています。根幹業務の例としては、脚本や監督、制作などがあります。そこに撮影や照明等、技術に関わるスタッフは先輩達に依頼します。
この新人と先輩のMIXが凄く大事です。
新人は先輩から多くのことを学ぶことができますし、結果、先輩のサポートがあるからこそ、根幹は新人といえども、完成度の高い作品が期待できます。
しかし、もう一方、先輩達に教育にも影響します。
先輩達は経験が豊富ですが、その経験の蓄積がイノベーティブな考え方を阻害するケースが多々あります。
今回の映画制作の事例あげます。
映画制作といってもスポンサーがいるわけでもないので予算は限られます。
予算をかけるところ、かけないところをバランス良く考えなければ予算は超過します。
今回の映画では予算を調整している際、
衣装費を抑えなければならなくなりました。
予算は30万にしていましたが、どうしても70万はかかりそうで、
超過は40万。制作を行う先輩にその内訳を聞くと、
衣装を扱うスタイリストの費用、
衣装レンタルを行う会社のレンタル費用、
その他衣装レンタルにない衣装の購入費用となっています。
もちろん、衣装費用の一般的な内訳は上記のようになるのは当然です。
この予算をどう抑えるかを考えたところ、
当社の新人が以下のように提案してきました。
「衣装をメルカリで全部ピックアップしました。費用は全部で12万です。そこでお願いがあります。タグもついている新品がありますので、そのタグはガムテで固定してとらないでください。なぜならまたメルカリに出すからです。13万で再販売して+1万利益でます、、」
先輩達は絶句(笑)
当然、その案は採用されました。
実は新人と先輩のMIXはトラブルも頻発するのですが、融合すると大きなイノベーションが起きやすいです。
先輩が部下(新人)を潰してしまうケースはよく聞きます。先輩に提言することをためらう部下も多く存在します。
この社内プロジェクトでは、ファシリテートをきちんと行うことで、先輩が部下に対する育成方法や潜在能力の引き出し方を学び、後輩は先輩とどうコミュニケーションするかを学び、同時にそれはチームビルディング方法を学ことになるというわけです。
社会貢献
多くの企業が社会貢献に関した活動をしています。
当社も以前から社会貢献を考え、実行したりはしていますが、
やはり得意分野で社会貢献を考えた方が効率的、効果的だと考えています。
今回の映画づくりの際、
撮影協力と挨拶回りで、島根の自治体の皆様へお会いしました。
ところが、お会いしながらも、何かの違和感を感じていました。
そのため「何か心配なことありますか」と聞いたところ、
彼ら曰く、ほとんど映画会社が、最後はお金の話をしてくるそうです。
「この映画をつくるので、地元をPRできます。つきましては〇〇万円、ご用意できますか」
当然、当社は、金銭の要求もしなければ、ロケーションを貸していただけるだけでも充分だと思っていることを告げました。
それで、ようやくホッとしたようです。(笑)
本題は社会貢献ですし、島根のPRではないので、
当社は当然のスタンスです。
今回の映画のテーマは、
主目的が(前述した)島根の文化を伝えるPRビデオでなく、
親子の愛を描いたものです。
特に「親の思い込みを変えないと、良い社会にならない」とのメッセージを入れています。
そう「親の思い込みを変ることで」小さなトラブルから大きなトラブル(例:戦争)までを回避でるのではないかとの仮説を立ててつくりました。。
よって、世界の映画祭に出品して世界の方に見てもらう、さらに様々な環境団体や教育団体などでも放映してもらう予定です。
これは、小さな取り組みかもしれませんが、この小さな取り組みの積み重ねこそが社会に良い影響を与えると信じています。
新たな事業を考える
実は映像コンテンツの収益化も本映画を通じて、研究を行なっています。
従来はテレビ映像(ドラマやバラエティ)は広告収入に頼り、
映画は劇場収入に頼ってきました。
しかしここ数年間は急速に収益形態が変わろうとしています。
テレビや映画はネット視聴に代わり、PPVなどの収益形態に代わりつつあります。
それでもテレビ制作や映画制作の現場は旧態然として、収益構造が悪いものです。
映像などのコンテンツビジネスが変化する中、
詳しくは秘密とさせていただきますが、映画づくりを通じて新たな収益モデルをつくろうとこの映画制作プロジェクトは進めています。
前述の社会貢献と収益化は一見相反するように見えますが、
この相反思考が上記、収益構造を生み出していると当社は考えています。
社会貢献と収益化を一体化を模索、構築することで、
本当の映像制作の魅力が生み出されることを期待しています。
文:芦田博