2022.08.13

次世代のパートナー企業とは

次世代のパートナー企業とは

間違いだらけのパートナー会社選びが会社を滅ぼす

いまさらあえて説明するまでもないですが、企業には経営活動をサポートする、いくつかのパートナー会社が存在します。

 

例えば、企業に代わって経営戦略の立案や設計などを行うコンサルティング会社、企業の製品やサービスなど、テレビCMや新聞・雑誌、Webといったメディアの広告制作を通して活動する広告代理店、企業の基幹システムやITインフラを構築するITベンダーなどです。

 

さらにパートナー会社のみならず、税理士や弁護士、弁理士など、士業の資格を使って企業の経営活動を側面から支えるパートナー会社もあります。

 

ここで取り上げたいのは、パートナー会社の実態と選び方についてです。特に重要なのが、コンサルティング会社、広告代理店、ITベンダーの3つ。というのも、これらパートナー会社は、関わり方次第では、企業の業績に大きな影響が出てしまうからです。

 

資金が潤沢な超一流企業は、これらパートナー会社に相当する部署を立ち上げ、人材をスカウトして社内に確保しています。それでも、例えばCMを打つときには大手広告代理店にはお世話になっているはずです。

 

そして「お金持ち企業」を除くほとんどの企業は、予算や時期、課題などに合わせて、必要なパートナー会社に依頼することになります。

 

ところがパートナー会社も、顧客企業をサポートするための絶対的な経営戦略のノウハウを持ち合わせてはいません。それでも、なぜ企業の戦略パートナーとして存在していけるのでしょうか。

 

有名なパートナー会社には、優秀な人材が集まってきます。その中でも大手は、これまでも一流企業のサポートで利益を上げてきた実績がありますから、新人は先輩たちと「チーム」を組んで、企業の要求に応えていきます。

 

その際の教育は、日本の職人のように「技を盗む」徒弟制度に近く、一人の先輩社員が多くの後輩を育てることがなかなか困難です。

 

これらの「チーム」が企業から求められることは個々に異なりますから、一定レベルの共通ノウハウを持てば、あとは現場対応で成功を収めればいいわけです。

 

この繰り返しで個別の経験値は上昇しますが、そこで学んだノウハウを横のつながりで共有して会社全体のスキルアップを目指してはいないのではないか。その結果、社員のクオリティーはバラバラになりがちです。(ノウハウは属人的になる)私はそう推測しています。

コンサルティング会社の実態とは

私が経営戦略のサポートを行うために企業を訪問すると、「前に別のコンサルティング会社を使って失敗した」という旨の話をよくうかがいます。こんな話は今に始まったことではありません。

 

「どうしてコンサルティング会社は嫌われるのだろう」と、広告会社で働いていた時期から不思議に思っていたので、現在でも話題に上るたびに詳細を聞くようにしています。

 

理由は多種多様ですが、ひとつ例を挙げましょう。とある電鉄会社の話です。

 

経営企画室という部署で話していた際、前のコンサルティング会社が作成した経営計画書を見せてもらいました。計画書は2部あり、それぞれ別の会社から提案されたものでした。双方とも、誰もが知っている大手のコンサルティングが作成したものです。計画書は分厚く、おそらく300ページほどはあったでしょう。

 

パラパラめくって眺めたのですが、正直「ひどい内容だなぁ」と、思わずため息が出てしまいました。私も新人時代から今日まで嫌というほど様々な企画書、計画書を作成してきましたから、書類の品質は数ページ読むだけで分かります。

 

その経営計画書がひどい代物だと思った一番の理由は、複数の担当者がつくったことが明白で、全体の一貫性がなく冒頭と後半で内容がつながっていないのです。

 

分業したせいでしょう、担当者それぞれの「色」が出ており、主張が微妙に異なっているうえ、競うように自分のパートをたっぷりと作成したために異様なほどの分量となってしまったわけです。これを真に受けて実践しようとしても、実現することは到底不可能に思えました。

 

経営企画室の担当者も一貫性のなさに気づいており、「これはとても使えるものではない」と嘆いていました。試しにこの経営計画書の値段を聞いてみたら、1社は1億円、もう一方は3000万円かかったとのことです。

 

大手でお金を持っている企業でしたから、「今回は失敗した」ということで担当者への多少の処分程度で済むのかもしれませんが、これが中小企業なら大きな痛手になるのは間違いありません。

 

ただ、本当に怖いのは、この程度の品質の経営計画書を信用して実践した場合です。どう考えてもうまくいくはずがないのに、多額の費用をつぎ込んでしまったら、損失は計り知れません。

 

それを思うと背筋が寒くなりました。最小限の被害で済んだのですから、ある意味、ストップをかけた経営企画室の判断は正しかったともいえるのです。

 

先日も、年商200億円ほどの企業から経営戦略の設計を依頼されました。これぐらいの規模なら、当然、これまでにコンサルティング会社が介在したことはあるはずです。

 

そのことを聞いてみると、「いやあ、大手のコンサルティング会社に3000万円ほどかけて依頼しましたが、これがもう使いものになりませんでした。出てきたアウトプットが『強みは御社の人材です』だけで。これを見てさすがに社長も激怒しました。」

 

 

コンサルティング会社をうまく活用したり、提案がうまくハマったりして、企業の業績が向上した事例はありますが、頻繁にこのような失敗も現実に起きているのです。

 

以前、コンサルティング会社の実態を探るために、数人の方々に話をうかがいました。その一人が、私が所属していたMBAスクールの教授です。

 

彼は、そのスクールで教鞭を執る前に大手コンサルティング会社に在籍していました。そこで、実際にコンサルティング会社では何が起きているのか、率直に尋ねてみました。

 

大手コンサルティング会社はそもそも、高学歴の人材が登用されます。また、新入社員の研修には体系だった研修システムがあるそうなのですが、経営計画策定における統一された基本ルールやノウハウは存在しないそうです。

 

研修後は、先輩社員から実践を通じて教わるのですが、そもそもみんな地頭が良いので「現場で覚える」ということを主体に教育がなされているそうです。

 

結果、個別指導になるため、アウトプットされる経営計画書は個々の能力に依存することになり、素質のある人材は良質の経営計画書を作成しますし、素質のない人材は粗悪な計画書を生み出します。

 

要は、大手のコンサルティング会社であっても、担当者によってコンサルティングの品質にムラが生じているということでした。

 

もうひとつ、コンサルティング会社嫌いの経営者らが言う口癖があります。それは、「彼らは戦略立案できても、戦術までは教えてくれない」ということです。これは、とても深い意味を持っています。

 

戦略と戦術の違いは今さら説明するまでもないでしょう。いくら優秀な戦略を立てても、戦術、つまり実践方法を踏まえていない戦略設計はただの空論に終わるのです。言い換えれば、「理想論ばかりで現実的でない」ということです。

 

コンサルティング会社は、あくまでも戦略設計をすることによって収益を上げます。しかも、より高額な費用を請求できれば、優れた仕事を成し遂げたとして評価されます。

 

極端なことを言えば、高いお金で買ってもらえるように見える企画書、計画書を作成できる能力があればいいのです。現場は関係ありません。そこまで生々しいサポートをしていては手離れが悪くなるからです。もちろん現場経験など、ほぼないでしょう。なぜなら、その企業で働いているわけではないのですから。

 

こうして、現場をよく知らず、能力もまちまちな人間が机上の空論をまとめ、寄せ集めてひとつの計画書にする。それが、高額な戦略設計書の正体なのです。

 

もちろん私の知り合いや仕事仲間には、優秀な経営コンサルタントが何人もおり、コストに見合う結果を出しています。なのに経営者にこう言われてしまうようなネガティブ・イメージの払拭は、コンサルティング業界全体で考え直さなければならい重要なテーマです。

 

では、無駄遣いを極力避けて、優秀なコンサルティング会社を選ぶにはどうすればいいのでしょうか。

 

それはやはり、経営者や幹部たちが知識や技術を高め、自ら経営戦略をきちんと立案し、実践できるような能力を身につけるしかありません。それが経営者の仕事なのです。他社に丸投げしてしまうから失敗するのです。

 

経営者自身が経営戦略のリテラシーを上げれば、あとは必要なところだけコンサルティング会社に依頼して部分的にサポートしてもらえばいいわけです。

 

ちょっとでもサポート内容がおかしければ、そこで立ち止まって修正させたり、違う会社に替えたりすればいいのです。サポートに対する鋭い目を持てば、被害を拡大させずコストを低く抑えて、経営戦略を実現することが可能となります。

広告代理店が抱える苦悩

かねてから、社員の自殺やオリンピックの利権問題等、広告代理店業界の信用を揺るがすいくつかの大きな事件が続いています。

 

広告代理店を擁護するわけではありませんが、当社は広告代理店も重要な業務パートナーなので、裏事情はそれなりに知っていますから広告代理店経営者らの苦悩を察することはできます。

 

広告代理店の苦悩とは何か。それは、費用対効果の低下と、情報提供のためのメディアの多様化について行けないという点です。少し詳しく説明しましょう。

 

通常、顧客企業が広告を掲載したい場合、広告代理店がその広告制作から出稿までを一元的に請け負うのですが、「広告」という言葉や存在が時代にそぐわなくなっているという事実です。

 

広告は、その言葉どおり企業の製品やサービスを消費者に広く告げるものです。昔は、製品やサービスは近くの店舗で直接目にするか、営業マンのセールス、または口コミでした。それに加え、予算のある企業は新聞、ラジオ、雑誌などのマス広告を使って売り上げを伸ばしてきました。

 

そして、昭和30年代からの高度成長期に大企業をさらに大きく育て上げたのは、テレビの普及です。家族や友人がテレビの前に集まり、翌日は学校や職場でテレビの話題で盛り上がるという、そんな時代です。

 

テレビCMが一発成功しただけで上場企業が生まれたりもし、広告の影響は絶大でした。

 

しかし、現在では残業や共稼ぎの増加、テレビ以外の娯楽の多様化などといった理由で、同じ屋根の下にいても家族の生活が離れ離れになりました。

 

さらにインターネット環境が充実し、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が普及したことによって、良い商品やサービスは口コミ情報で広がるようになりました。

 

同じように「誇大広告」もすぐにウソだと見抜かれ、拡散されます。まことしやかに語られたデマが真実だと思い込み、さらに広めるという悪例もあります。失敗やミスはあれば、たちまちSNSで炎上し、企業は容易に立ち直れないまで打ちのめされることもしばしばです。

 

すると、企業は安全第一の「自主規制」を始め、広告のインパクトは弱くなります。さらに国民の収入がどんどん減少していて、モノにお金をかけないようになったことも大きな原因です。

 

こうしたさまざまな要因から広告自体に意味があるのかが見直され、広告費の適正化や削減に取り組む企業も増えてきています。

 

ここまで言っておいていまさらですが、実は「リーマン・ショック」以降、企業の広告予算は増えているのです。

 

出稿費の値上がりなどの理由で単純に比較はできませんが、「バブル」の時代よりも広告費自体は増えています。マーケティング、プロモーション予算を削減している企業がある代わりに、大きく費用を投じている企業もあるのです。特に目立つのが、インターネットの広告費です。テレビへの出稿費を食うように、いわゆる「ゼロ年代」半ばからのインターネットの広告費は右肩上がりを続けています。

 

テレビや新聞、雑誌などのマス広告(※マス広告とは、テレビCM、新聞広告、雑誌広告、看板等のマスメディアを指す)の説明を入れますか)は減少しましたが、広告を打つ方向が変化しただけで、マス広告からWEBへ誘導するなど、昔にはなかった新たな広告設計モデルが登場し、企業の広告の設計手法が変わってきたわけです。

 

しかし広告代理店の経営者らは、なかなか動き出すことができません。ここに旧来の広告代理店の弱点があります。

 

その理由はまず、マス広告の対象となる一定のパイの奪い合いが始まっており、マス広告を打てる企業も限定的になってきたということです。

 

原因のひとつは、前述したようなテレビ視聴時間の減少です。テレビは中高年を中心に視聴頻度は高いのですが、30代以下の若い世代の間では、テレビよりもスマホの利用が圧倒的に増加しています。メディアへ接する時間は今も昔も大きく変化していないのですが、その方向性が大きく変わってしまいました。

 

さらに、若い世代の収入が伸びないため、残業に追われて帰宅時間が遅くなり、結婚しても共稼ぎで子供をつくるどころではなく、結婚自体がままならなくなっています。

 

夜7時から9時までのいわゆる「ゴールデンタイム」と呼ばれる時間帯にテレビを見ている余裕はありません。

 

日本の基幹産業である自動車も、地方は別ですが、大都市圏では車を持てない、もしくは不要と考える人々が増えています。モノを買う人が減れば、企業の売り上げは減っていくばかりです。実に単純な話で、少子高齢化で人口が増えなければ、広告を打っても購入者は限定されるわけです。

 

弱点のもうひとつは、ネット広告を制作するノウハウが不足しているという点です。
近年は旧来のテレビや新聞、雑誌広告などをつくってきた広告代理店よりも、ネット広告を制作することが得意な新興企業が急増しました。

 

ネットのマス広告はテレビCMなどよりも安く制作することができます。これにより、古いやり方を踏襲してきた中堅広告代理店は苦境に立たされてしまったのです。

 

またテレビCMの費用対効果は、基本的に視聴率と売り上げの対比でざっくりとしか測定できませんが、データ分析も進化したネット広告では、顧客の閲覧履歴をたどるなどの方法で、細かな費用対効果が計測できるようになりつつあります。そのためか、テレビで巨額な費用のかかるCMを打つことを疑問視する企業も出始めました。

 

現在、テレビでオンエアされるCMの商品・サービスは年間約7500銘柄といわれています。わずかな7500銘柄の案件を、複数の広告代理店が激しく奪い合っている状態なのです。

 

マーケティング用語に、競争環境が激しくなって血みどろの争いをする「レッド・オーシャン」という言葉がありますが、まさに広告業界は「血の海」になっているのです。

 

また、広告代理店の広告制作の仕組みにも問題点があります。広告代理店は、クライアントから広告を受注すると、各種市場調査やCMなど企画・広告制作業務のほとんどを外部の業者に外注します。

 

するとどうなるでしょう。「広告を制作する」という業務のノウハウが本来の広告代理店には蓄積されず、制作力の「強み」が外部業者たちに渡ってしまうのです。

 

大手広告代理店は営業を主体とする機能しか持たず、社内の制作能力は著しく弱体化します。そこにIT系の制作も得意な新鋭の広告代理店が参入してくれば、広告代理店はクライアント企業に対して営業のサービス合戦をするしかなくなります。

 

営業先を新規開拓するため、広告代理店は、これまであまり注目していなかった中小企業にも営業活動を展開しています。

 

ただ、中小企業側は、大手広告代理店とはあまり関わったことがないため、広告だけでなく、経営戦略までサポートを求める場合があります。ここであえて取り上げたのは、こうした例が私の周りでもたまに発生し、そのほとんどが失敗しているからです。

 

第2章で説明しますが、経営戦略には、マーケティングやマネジメント、オペレーションなど6つのステージがあります。

 

そのひとつであるマーケティングは、4P(プロダクト、プライス、プロモーション、プレイス)に分類されます。このうちのプロモーションはさらに細分化され、広告はそのごく一部を担っているだけです。

 

広告は経営戦略活動全体から見れば、あくまでも一つの活動要素であり、ましてや広告だけでは経営課題を解決できるはずもありません。

 

大手だからといって広告代理店には経営戦略をサポートするノウハウを持っていませんから、経営戦略のサポートを安易に求めたりすると、大変な目にあってしまうのです。

ITベンダーの驚くべき練金術

さて、最後に企業のパートナーとしてのITベンダーの現状について説明します。

 

企業はある程度の規模になると、効率を求めてITシステムを導入し始めます。小規模の経理システムあたりから、そのうち販売管理、顧客管理など、多様な目的を持つシステムへと規模は大きくなっていきます。

 

近年ではソフトウェア自体も著しく進化しました。パッケージソフトもあれば、クラウドシステムを使用した安価なものもあります。また企業の事業体系やニーズにぴったりと適合するよう、一からシステムを組み上げる「スクラッチ」という手法もあります。

 

ところが、このITシステムの導入にも、かなりの割合で失敗がつきまとうのです。

 

IT発注金額は、数百万のものから数千万、数億という規模のものまであるので、その費用はバカになりません。

 

一般的に費用は、システム制作に必要な工程と人数や日数などの「工数」から計算されますが、それは先方の言い分次第です。しかも開発の内容次第では、半年から数年かかることもあり、時間とお金がかかります。

 

ところが、いざ完成してみれば使えないという、ただの「水の泡」になるシステムが少なくありません。それが原因となって訴訟沙汰に発展した例もあり、企業経営に多大な悪影響を及ぼすこともあります。

 

では、なぜこのようにITソリューションの導入は失敗するのでしょうか。

 

それは、発注側の企業がITベンダーの使い方を知らないことと、受注側のITベンダーが企業のニーズを理解できないことです。この2つの要因により、ITの導入は失敗することが多いのです。

 

まず、企業側の問題から説明しましょう。

 

社内でITソリューション導入に関する知識や経験を持った社員がいるなら話は異なりますが、中小企業であれば特にITソリューションの導入経験を持たない企業がほとんどですから、まずは発注先としてITベンダーを選定に苦慮します。
ここで企業は、大きく分けて3つの選択に直面します。

 

1つめは、前述の一から作り上げる「スクラッチ」というパターン。この選択を行う場合、まずは業務内容や必要事項の整理などの聞き取りから始まりますから、コストがかかるうえに開発期間も長くなります。今までにないプログラムをつくるわけですから、失敗するリスクも高くなります。

 

2つめは、パッケージソフトを購入するパターンです。企業の課題やニーズに合ったソフトを購入すれば、比較的安価で失敗は少なくなります。とはいえ、会計ソフトなどのレベルならまだしも、基幹システムクラスのパッケージになると、導入に数億円かかることもあります。

 

パッケージソフトは、たいていニーズに合わせた「カスタマイズ」が可能となっています。ところがカスタマイズは別料金になっていて、これがべらぼうに高い。安くパッケージソフトを買ったはずなのに、カスタマイズしたら信じられないぐらい高くついたという話はよく聞きます。

 

最後は、近年急増している「クラウド」を使ったパターンです。それまでは、大型コンピューターによるシステムを社内に設置して利用することが当たり前でした。前述したスクラッチの場合、多くはこのタイプです。

 

「クラウド」は「雲」という意味ですが、社外のどこか厳重に管理されたシステムセンターに置かれたサーバーで一括管理され、クラウド内でソフトウェアを動かすことによって使用します。設置場所は一切明かされません。

 

ソフトウェアはすべてインターネットを通して利用するため、会社の中だけでなく、ノートPCやタブレット端末、スマホなどで社外からも簡単に使うことができます。コストパフォーマンスは高いのですが、やはりパッケージソフト同様、自社向けに作ったものではないので、ソフトの使い勝手は必ずしもよいとはかぎりません。

 

ケースバイケースなので良し悪しの判断は難しいのですが、私が経験した事例をもとに、大まかな注意点を説明しましょう。
これは、私が以前、広告会社の役員をしていたときの事例です。起業から2年間は、経理ソフトの入力は税理士に依頼していました。その後、会社の売り上げが数億円規模になったため、社内に経理担当の人材を採用し、経理ソフトの選定をすることになりました。

 

ここで売り込みにきたのは、経理ソフト大手の上場会社です。当時の私は経営に関わっていたとはいえ、経理ソフトについては門外漢です。そこで、このソフト導入の判断は社長マターで行われました。

 

営業マンの説得力あるプレゼンが実り、この会社の扱う経理ソフトのパッケージを購入することになりました。購入価格は400万円で、ランニングフィーは、月数万円だったと記憶しています。経理の人材採用をプラスすると、トータルで月30万円のコストが増えたことになります。本来なら、これで万事解決となるはずでした。

 

ところが、この経理ソフトが自社の業務に適していないことがあとで判明したのです。またソフトはかなり高度なもので扱いが難しく、経理部が混乱しているのを見かけるようになりました。最終的に、この経理ソフトがそこそこ機能するまで、なんと2年近い歳月がかかってしまったのです。

 

遅ればせながらこれはまずいと思い、知り合いのシステム会社に相談したところ、このソフトが自社の規模に見合わないもので、もっと簡単な経理ソフトがあることを教えてくれたのです。勧められた経理ソフトを購入し、試しに使ってみると、あっという間に今までの問題は解決してしまいました。

 

結局、当初の経理ソフトは思い切って廃止してしまい、その会社とのランニング契約も停止しました。これは社長と私たち役員の判断ミスであり、経理部には申し訳なかったと思っています。
この一件があってから、外部会社の売り込みには注意を払うようになりました。

 

もうひとつ例を挙げましょう。これはわりと最近のことです。弊社が経営戦略策定のサポートすることになった会社は、某社のクラウド型顧客管理(CRM=カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)ソフトを使っていました。

 

使用人数に応じて料金が発生するタイプで、使用料は1人1万円。40人分の申し込みを行っていたので、月40万円、年間にすれば約500万円になります。このソフトを導入した理由も私の経験と同じで、やはりプレゼンとセールストークに納得して契約したとのことでした。

 

しかし、CRMにはある程度のノウハウが必要で、この会社の社員のスキルでは取り扱いは時期尚早でした。CRMはあくまでツールであり、使いこなせなければ価値がありません。どうやら導入すると劇的に売り上げが見込めると説明されたようですが、いざやってみると、容易には扱えなかったのです。

 

私は早々に、この会社に顧客管理ソフトの解約を提案し、シンプルなメールソフトを使った顧客管理手法を指導し、結果コスト削減にも成功しました。

 

最後にもうひとつだけ、ある企業の導入失敗の事例について挙げておきたいと思います。

 

この企業のコンサルティングに入った私は、基幹システムの導入に関して顧客企業とともに、ある大手ITベンダーのプレゼンに参加して、説明を受けることになりました。

 

ITベンダー側からは10人程度が来社し、プレゼンはこれまでの実績や高い業界シェア率から始まりました。説明を受けるうちに、顧客側の社長らは興味を示し、このITベンダーに決定しそうな雰囲気になっていきました。

 

しかし、私だけはこの会社のシステム導入に反対しようと思っていました。それは、これまでの経験から、反対する理由がいくつか浮かび上がってきたからです。

 

大手ITベンダーは通常、とても優秀なビジネスモデルを持っています。ある企業から高額なITソリューションのプログラム作成の依頼を受けて完成させたことが、ひとつの実績となります。しかしそこで終わりません。完成したシステムをコピーして一般販売ができるように調整し、パッケージソフトとして2次販売するのです。

 

数十万円クラスから数億円単位のものまで、一般用パッケージソフトが勢揃いします。次の案件からは、このパッケージソフトを利用し、ニーズに合わせてカスタマイズすればいいのです。カスタマイズすれば、そこでまた料金が発生します。このように、まるで練金術のようなステップで、売り上げを出す仕組みになっているのです。

 

ただ、このビジネスモデルに対して問題を提起しているわけではありません。問題はその後に発生します。

 

急成長し、すばらしい実績を上げてきたITベンダーは、技術のあるシステムエンジニアや、ITソリューションを熟知している営業の人材不足にいつも悩んでいます。そんな状況下で大きなお金が動く一からのスクラッチならばITベンダー側も優秀な人材をつけますが、パッケージソフトのカスタマイズ程度で済みそうならば、経験の浅い人材を担当させてもいいと判断します。
企業側も、パッケージソフトのどこをどう修正してほしいか、明確なオーダーが得意ではないことは先に述べたとおりです。お互いに知識や経験の乏しい人材同士の話し合いに陥りがちなのです。

 

ITベンダーはこうした曖昧なオーダーから自社を守るため、「要件定義書」という書類を作成します。この書類は、企業側のオーダーから修正点を聞き出してまとめたものです。これは業務としては当然のプロセスなのですが、要件定義書には、一種の契約書としてITベンダーを守るという裏の目的があるのです。

 

企業はどんなプログラムにしてほしいかさまざまな要求をしますが、専門知識が足りないので、要望の内容は曖昧になりがちです。これをITベンダーは企業側の注文として要件定義書にまとめ、言われたとおりに仕上げます。できあがったプログラムを実際に操作してみると、どうしても「使いにくい」「機能が足りない」など、何かと不満が出てきます。

 

ここで、最初に作成した要件定義書が力を発揮します。ITベンダー側は、「要件定義書にあるとおりに作成した」と主張するのです。その後に発生した問題点や不満は、要件定義書にはない「別の案件」となります。企業は使いにくいプログラムを我慢して使うか、新たな案件として追加注文するかしかなくなります。そこで追加注文すると、新たな注文となり多額な費用が発生します。こうして要件定義書はITベンダーの保険となるわけです。これがITソリューション導入の現実です。

 

前述のITベンダーに対して私が反対した理由とは、プレゼン時にITベンダー側から多くの来訪者があったという点です。人がたくさん来ると、企業側は「力を入れてもらっている」と思いがちですが、実は役割が分かれているだけで、まとめ役がいない可能性が高いのです。まとめ役がいれば、その人物がすべて話せばいいはずで、10人も引き連れてくる必要はありません。

 

また、シェアや実績を最初に話すのは、中身について自信がない現れで、実際、プレゼンの内容はそれに該当するような印象でした。だから反対したのです。

 

ところがこの企業は私の忠告を聞くことなく、ITベンダーの採用を決定し、反対の声を上げたせいか、それ以外の忠告も聞き入れなくなったため、この会社との取引を辞めました。

 

その後、私が予測したとおり、このITベンダーのソフトが導入されることはなく、2億円ほどの費用が水の泡になったと聞きました。企業の業績もその後、下落していきました。

 

ITソリューションでの失敗を避けるためには、企業のニーズや課題を把握し、かつITベンダーの特性やプログラムを理解して双方を上手につなぐコンサルタントを起用するのが望ましいのですが、優秀なコンサルタントはそう簡単には見つかるものではありません。IT化でコスト削減を図ろうという声が高まっていますが、それはITを使いこなすことができてこそ。ここでどのような選択をし、上手にITを導入するかが明暗を分けるのです。

次世代のパートナー会社とは

いかがでしたでしょうか。

コンサルティング会社、広告代理店等の現状の業務サポートでは、企業サポートが充分できるかという問いに対しては、多くの疑問が残ります。

実は、これらパートナー会社には共通の経営戦略方針が皆見えます。

それは、

 

①業務のセグメント

 

 

②手離れを良くする

 

 

ということです。

確かに経営サポートを行うには、全方位の知識と経験、ノウハウが必要です。

人材は流動化し、

社員教育を行なっても定着しないばかりで、

教育コストは無に帰すると考えるパートナー会社の経営者も数多くいます。

よって比較的短い時間での教育を可能にするのが「業務のセグメント」になります。

また、このセグメントを行いながら、「手離れの良さ」を追求すれば、

教育にコストや時間を割くことなく、利益の追求も可能になるわけです。

このようなパートナー会社を選択すると、

結果、コストばかりかかり、全体視点にたって業務を進めないので、

効果が出にくくなるのです。

 

 

では、どんな会社を選択すれば良いか。

 

 

①戦略から戦術まで包括できるサポート体制を持つパートナー会社

 

 

②人材教育に力を入れているパートナー会社

 

 

となるでしょう。

ここを詳しく解説したいところですが、

本コラムではここまでとし、今後このコラムで解説します。

※本コラムは、「世界一やさしい 「経営戦略」立案講座」から抜粋、紹介しています。

 

文:芦田博

●コラムの記事は、毎月1日を予定しています。
9月公開予定コラム内容:「間もなくITベンダーは消滅する、その理由」