2021.08.28

コンペ実施の注意点

コンペ実施の注意点

外注企業の選別はコンペで見極める

メーカー等の企業である皆様(クライアント)は、常に外注企業への依頼は欠かせない業務の一つになっています。

外注企業とは、コンサルティング会社、広告代理店、システム会社等、その種類は様々ですが、企業運営のサポートを行う上で欠かせない存在です。(これらの企業をパートナー企業と呼びます)

但し、様々な調査から、これら外注企業への不満足度は、なんと70%前後と言われています。

多額な予算をかけて、外部発注するわけですから、この外注企業への見極め方一つで、自社の業績に大きな影響を及ぼすのは自明の理です。

今回は、この外注企業の見極め方の一つをお伝えします。

その一つが「コンペで見極める」ことです。
企業がパートナー企業と取引する上で、最初のアクションが「コンペ」であることが多い。
そのため「コンペ」で、今後のおつきあいが決まるわけですが、その決定に、ジャストアイデアや場の雰囲気、流行り言葉、最新ツールなどで決めてはいないでしょうか。

実は多くのクライアントが、本当に「良い企画」を見極めることができないまま、上記のような理由で採択してしまいがちで、当然、実施にこぎつけても、希望した結果が出ない、そんなケースをよく聞きます。

このコラムでは、企画内容よりも、その周辺情報に目を向けることで、「本当に良い企画」を見出すことができるようになります。

実際私が担当している多くの企業の御担当者は、これらのインストラクションにより、かなり手厳しい採点ができるようになっています。

しかし、同時に、このインストラクションを受けていない、同じ企業の審査員は、かなり点を高めにつけることが多く、企画の採点力に大きな差がついています。

今回は、「コンペ」採択における、10のポイントを紹介します。

①たくさん人がくる会社の企画は大抵クオリティが低い

提案にたくさん人を連れてくるパートナー企業があります。

人がたくさんいれば、クライアントは、それだけ力を入れてくれると思うのかもしれませんが、これは逆効果。
だいたい話す人はごく一部。

人が多いチームは「全容を把握している人がいない」という表れです。

詳細は④のパートで説明しますが、人の多さと企画の内容の良し悪しは反比例する傾向があります。
人が多かったから良い会社、良い企画というわけではありません。

むしろ、採択、実施した場合、そのプロジェクトは混乱しはじめる可能性が大きいのです。

②企画書のタイトルとインデックスで全てがわかる

さて、企画書のタイトルは非常に重要です。

例えば、ブランディング戦略なのか、プロモーション企画なのか、発注へのオリエンテーションをどう捉え、どうタイトルをつけるか、ここで企画が何について語るか、全てわかります。

また、2枚目にインデックがあるとは思うのですが、ここは企画のあらすじが書かれているので、企画書の組み立て方が一発でわかります。
大抵、既に、この時点で間違っていることが多い。

ハワイに行きたいと言っているのに、向かっているのはフィリピン、みたいな、、。

同じ南に行き先を向けているようですが、行き着くところは間違っていることが多いのです。

そう、まず、このタイトルやINDEXが求めていた内容と沿っているかを確認しましょう。

③冒頭に実績などが書かれている

冒頭に自社の実績やスタッフの経歴などを説明するパートナー企業があります。

これ詐欺に用いられるテクニック!

まずは自社をハロー効果で信用を勝ち取ろうというもので、中身に自信のない表れです。
実績を記載するのは悪くないのですが、良い企画を書くパートナー企業の多くは実績掲載は後半にしています。もちろん中身があれば前段でもかまいませんが、冒頭に持ってくる提案のとんどは後半撃沈します。

このハロー効果、実はくせもので、クライアントがこのハロー効果で酔ってしまい、最後まで企画の良し悪しがわからない場合があるのです。

わかっている会社は冒頭にアブストラクション(企画の要約)を持って来ます。

④章立てがつながっていない

インデックスの流れが完璧でも、章から章がつながっていない企画書が多発しています。

①の説明のように、多くのチームがバラバラに動き、誰もその流れを監修してないことが多いのです。

例えば広告戦略を提案する場合、環境分析〜資源分析〜プロモーション戦略の策定〜クリエイティブ〜広告プラン〜KPIの設定などに流れるのですが、それぞれ導き出した結果が違うことが多く、そして全てがつながっていないのです。章によっては良い提案をしている場合もありますが、全体がつながらないと意味がない。

そして、さらに悪いことに、そのパートナー企業は、「その流れが破綻していることに気づいていない」のです。
なぜなら、プレゼンが終わったら満足そうな顔しているから、、。

企画書は川上から川下に流れるように、と教わってきた自分にとっては、このようなプレゼンテーションは何をしたいのか、混乱してしまいます。

個別のアイデアに注目するより、この流れがきちんとできているか確認する方が重要です。

⑤個別の専門知識がない

さらに、個別の専門知識が低いことが多々あります。

ここも詳細を語るつもりはありませんが、ブランドの定義を間違えていたり、マーケとプロモーション、KPIとKGIの違いを知らなかったり、その算定方法など、マーケや広告の専門家と名乗っているのに「知らなすぎる」と思うことが多々あります。(逆に流行り言葉や横文字はよく使いますが)クライアントはその専門知識は知らなくてもかまいませんが、パートナー企業である専門家がその分野の基礎知識を知らないなんて、かなり恥ずかしいものです。これもよくあることです。

特に注意しなければならないのは、
企画書上で使われるフレームワーク。(※情報を整理した作図とは違います)

フレームワークの基礎を理解していて、オリジナルで作図するのはとても良い事ですが、基礎的な事を知らないで自己流で作成したフレームワークなのか、プランを恣意的に誘導する目的で作成されたフレームワークなのか、企画自体の信頼性を失う行為なので、よくよく考えて使ってほしいものです。(例:パイロットが計器の見方を知らない、そんな飛行機乗りたくないですよね)

⑥再委託、著作権の扱いには要注意

企画書にはトラップがたくさん仕掛けてある場合があります。

例えば有名な女優さんがグラフィクにデザインされているのですが、見積もりに計上されていなかったり、、。

このトラップを避けるため、オリエンテーションシートをつくる際、一番気をつけているのが再委託(①)や著作権(②)の扱いについてです。
ほっとくと、コンペの発注費用だけでなく、著作物における使用延長や二次利用で法外な金額が請求されます。

これはほとんどの場合、クライアント側は知らないので、気づかないとトラブルの元になります。これを避けるために以下の規約を含んだオリエンテーションシートを作成します。(まだたくさんの項目がありますが)

①再委託:再委託については、複数委託の禁止もしくは開示を求めます。再委託とは、一次受けの代理店がその子会社に、さらに外部へ発注して、また外部にと、3次請けならまだしも、8次請けなんてざらに発生します。なぜ、これがダメなのか、、。

広告代理店を例にとると、15%以上の間接費を引いて、その子会社へ制作発注します。この子会社は今度は30%くらいの間接費をとり、次に外部企業へ委託します。これがさらに続くと、そう、かなり大変なことになります。

要は1000万で発注しても、末端の制作費は100万だった、、。みたいなことが起きぬよう、再委託の開示を要求します。

②著作権:このトラブルは本当によく起きます。制作したデザインやロゴ、コピー等の著作物には基本的には買取を依頼します。もちろん買い取れない著作(例えば役者の肖像権等)もあるのですがその他の著作物は交渉します。ここをきちんとしなかった故に、CMやWEBの1年後の延長費で数千万請求された、なんて話はよく聞きます。

⑦メニューとプランの違いがわからない

これもよくあることなのですが、広告メニューとプランもしくは戦略の違いがわからないことが多い。

例えば、媒体プランの章では、「1億の予算ですから1000GRPになります」だけとか、「WEB広告は●●が良いと考えます、100万PV達成を想定しています」など。

では、この説明をわかりやすくしてみましょう。
・1000GRPは1億かかります。
・100万PV達成にはこのWEB広告です。

いや、それプランではありません。メニューです。
・いちご大福、100円
・600円あったら牛丼が2杯食べれます
みたいなコトです。

コンペを初めて受けるクライアントなどは、このメニュー提案でも新鮮にうつります。

ただ、メニュー書きは誰でもできます。本当に効果を上げようと思うならば、それはメニューなのか、それともプランなのかを見極める必要があります。

ちなみに、プランとは(例えば媒体プランでは)どのターゲットが、どのような視聴メディアに接するか、そして費用を鑑みメディア配分やスケジュールをつくり、リーチを最大化する。

などが 本当のプランになります。

⑧質問の時間が大切

それでも、オリエンから2週間程度で、企画するのはパートナー企業にとっても難しい。コンペはどちらかというと、パートナーとしてやっていけるかを判定するのが大切だと当社はクライアントに伝えています。

故にパートナー企業の見極めは質疑応答に現れると言っても過言ではありません。
態度のみならず、目の動き、質問の答え方、表情、足の向き、手の動き、貧乏ゆすりなど、あらゆるところに本性が見え隠れします。

例えば、「KPIで認知度10%あげると書かれていますが、その根拠となる理由とは」と聞くと、一見丁寧に答えているようで、その他の人を見ると、不機嫌な顔したり、貧乏ゆすりをしたりと色々な態度が見えてきます。

その態度いかんが今後のパートナーシップの良し悪しを占う意味で大事な情報となります。

ちなみに、ある広告代理店の提案を受けた後、私が早めにプレゼン会場を出て外で電話していたの知らずに、その広告代理店がプレゼンを終えて外に出て来た際、クライアントの悪口を言っていました。

もっともクライアントもよく見ていて、その代理店は不採用になりましたが、、。

もう一つ。

私がいくつかのクライアントのパートナー(広告代理店)を探すのに、
広告代理店回りをしたことがあります。

私は、その目的や役割を伏せて、以前のプロダクションの顔で代理店に行きました。

広告代理店は私の役割を知りませんですから、その担当者は本音をぶつけてきます。

「いやあ、今、30億のプレゼンかかえているから、できないかな〜、あっ、でも、もしこのプレゼンが落ちたら少し足しになるから、その広告やろうかな〜」

本音言いすぎです。
でも、この人は自分のことしか考えてないんですね。

クライアントにとっては、バジェットは数千万円であろうと、1個数百円のものを苦労して販売した利益から捻出した金額かもしれません。
彼らの部署の売り上げ確保のためのお金でもないし、このような本音を持っているパートナー企業にはまかせられません。

⑨マナーが悪い

案件が特定される恐れがありますので、具体的な説明は避けさせてもらいますが、礼節の知らない外注企業が多くなっている気がします。

一部のクリエーターが挨拶しなかったり、スーツ着用が一般化しているクライアントの場でGパンの人がいたり、プレゼン時間が大幅にオーバーしたりと、社会人マナー以前の問題が散見されます。

昭和の古い考え方を強要しようとしているわけではありませんが、実際に、このような外注企業に仕事を受注すると(安心したのか)態度が急変したりと、トラブルになるケースが多発しているからです。

マナーの悪さは、その後のプロジェクトへのマナーに繋がるわけです。

⑩やっぱり企画内容

上記をまとめると、会社のブランドがあり、人をたくさん連れて行けば、章立てバラバラの企画書でも、中身がなくても、礼節が欠いても許される、と考えている外注企業は多い、、という印象です。

奢りと企画の品質は反比例するかも、とよく考えています。

企画は、会社の規模大小や知名度でなく、真摯に中身に取り組む努力やクライアントへの尊重、または経験や頭脳など、心技体のバランスとパワーを持つのが良いパートナー企業となりえます。

私の経験では、この奢りが見えた外注企業の企画は、ほとんど中身がなかったということです。逆に、この反対の行動をとっているパートナー企業は、品質の高い企画を書いてきます。

まとめ

いかがでしょうか。
心当たりがある方も多かったのではないでしょうか。

当社への企業からの依頼は以前と比べかなり変化しています。

以前は広告代理店から仕事を受けマーケやプロダクトの提案書を作成し、クライアントにプレゼンすることが多かったのですが、最近は、クライアントと共に広告代理店へのコンペなどをクライアントと共に取り仕切ることが増えてきました。

当社は(色々な意味で)コンペ制度には反対ですが、それでも多くの企業がコンペを実施しなければならい事情も理解しています。

よって、クライアントが安全、確実にコンペをするには、どうしたら良いかという相談を受けるのです。

なぜ、このような依頼が増えてきたか。
元々は広告代理店等から企画発注を受け、提案する側だったので、提案する側の事情、スキル、気持ちなどの裏事情を理解しているからでしょう。

このような知見が、当社にコンペ取り仕切りを依頼される理由かと思います。

今回は、パートナー企業の見極め方の一つである「コンペ、入札等で見極める」という方法を紹介しました。

何よりも、コンペ、入札等の提案は、そのパートナー企業がパートナーとしてやっていけるか最初の関門となります。

この関門で、パートナー企業の見極めを行うことが、とても大事なのです。

以上は、経験から得た気づきです。参考までに。